2017年8月12日土曜日

クスコの教員ストライキ




ペルー紀行
     第一話 インカの末裔
     第二話 マチュピチュを目指して
     第三話 真っ暗闇の車窓    
     第四話 静かな声の男
     第五話 さあ、いざ行かん
     第六話 空中の楼閣を天空から俯瞰
     第七話 再び、静かな声の男登場
     第八話 インポッシブルミッション
     第九話 星降る夜
     第十話 インカの帝都
     第十一話 パチャママに感謝して
     第十二話 標高3400mでのピスコサワー
     第十三話 アンデスのシスティーナ礼拝堂








バッタ達は具合よく美味しい朝食にありつけて満足そうだったし、想像もしていなかった見応えのある教会見学をし、気持ち良くバスに揺られていた。母が日本から持ってきたガイドブックには、丁度このバス観光ツアーの特集が組まれていて、綺麗な写真入りで丁寧な解説がなされており、次に立ち寄る場所への簡単な知識を予め得ることができた。それによれば、そろそろ次の場所に着くのだろうか。






そう思いながら、車窓の景色を楽しむ。空は飽くまで青く澄んでいて、イメージしていたアンデスがそこにはあった。マチュピチュで最終列車になんとか乗り込めて良かった。運が良いというより、最後まで一緒にいてくれた旅行会社のアシスタントの男性が助けてくれたからこそ。名前も控えなかったし、彼がちぎって手渡してくれた電話番号の紙がどう探しても見当たらない。もう一度ポケットを探している時だった。信号などない道路の筈が、どうやらさっきからバスが動いていない。嫌な予感がした。


バスの後部座席にいた、サービス係りの女性が早足で運転席の方に移動している。スペイン語と英語で立て続けに同じ内容を早口で語る男性ガイドがマイクを持った。


内容を聞いて愕然。我々をマチュピチュで足止めにしようとした教員のデモ隊が、今度はクスコ、プーノ間の道路閉鎖を数ヶ所でしているという。どれぐらいの規模なのか、何ヶ所で実施されているのか、いつ解除されるのか、全く分からない、という。すぐにも解除されるかもしれない、一時間後かもしれない、と。


取り敢えず、バスはエンジンを切った。外をみると、誰もいない山道を我々一台が走っていたのかと錯覚していたようだ。延々と車の列が続いている。遠くに行かなければ、とのガイドの声で、数人が外に出る。情報収集を、との思いで、慌てて席を立つ。






オリャンタイタンボ駅から明け方に着いたクスコのホテルにあったペルーの地元の新聞を読んだが、教員のデモの話は一切載っていなかった。あの騒ぎがニュースにならないなんて。狐につままれたように思われた。それでも、その日、クスコのアルマス広場まで、比較的穏やかなデモ行進が行われたし、アジ演説が行われている様子を目にしていた。スピーカーを上手く使って、遠くからだと大勢なのかと思ったが、人数集めに苦戦しているように思われた。








しかし、どうやら確固たる効果が得られなかったのか、今度は別の観光ルートを狙って来るとは。ケチュア族のガイドの男性に、教員組合のデモ抗議について聞いてみる。延々と続く車の列の先を見つめながら、教員たちは間違っていない、という。警官の給与に比べ、彼等の給与は3分の1にしか過ぎない。教員たちは月に100ソレスの給与上昇を求めている。政府は教員に待遇改善をして然るべきである、と。

この国の混沌に触れた思いがした。抗議する教員、それを阻止する警官。力関係。教育は国力ではないか。それよりも、治安維持を優先してこなければならない歴史があったのだろう。

オリャンタイタンボ駅で夜中の2時まで毛布にくるまりながら待ってくれていた旅行会社のスタッフの女性も確か同じようなことを言っていた。教員によるデモ抗議の影響は困るが、彼等の要求は間違っていない、と。





それから、暫くしてバスは動き出すが、その後2回程停車を余儀なくされ、その度に規模が大きくなっている気がした。最後はバスの車体をどんどんと叩く人さえ出たほどであった。この影響でプーノへの到着時間は遅くなったし、途中での観光地点での時間も少なくなった。しかし、その程度で済んで良かったと思う。その後アレキパに行った時、アルマス広場で教員だけではない、鉱山の労働者、清掃者、看護師などが大勢でデモ行進をしている様子に出くわした。リマに向けてのフライトを午後に控えていただけに、それによる影響を思うと真っ青になったが、クスコのアルマス広場で感じた、ほのぼのさは微塵も感じられず、こちらは組合リーダーが大衆を扇動している様でもあり、大きなうねりが起きつつあることがビンビンと感じられた。






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