2016年11月30日水曜日

一年前との違い





藤田のチャペルを見たいと言われ、
日曜にランスまで車を飛ばす。

シャンパーニュ地方には何度か訪れているが、ランス市街には初めて乗り入れたことを、実際に車で走ってみて確認する。ランスは予想以上に大きな都市で、周辺の村とは趣を随分異にしている。

取り敢えず、赴くままに車を走らせると目の前に大聖堂が立ちはだかる。

驚くことに、大聖堂の裏手には何もない。

青い空に映えるだろうけど、雪でも降りそうな空が広がっている。

大聖堂に一歩足を踏み入れると、天の声が聞こえてきそうな神々しさ。

友人夫婦がロウソクを買って火を点けている。彼女は確か、敬虔なクリスチャン。
天上のアーチの美しさに見とれていると、ロウソクを手渡される。
お賽銭を友人から手渡されたような恥ずかしさを覚えるが、それも一瞬の事。当たり前のように手渡されたロウソクに、既にゆらめいている沢山のロウソクの中から一つを選び、もらい火をしながら、彼女の優しい思いに包まれてしまう。
「幸せになってね」
そんな彼女の声なき声が聞こえてくる。


青が基調のステンドグラスの前で思わず佇む。
こんなところで、シャガールに会えるなんて。


社会人として初めての職場で知り合った先輩。
当時女性の活躍が注目されていた中で、目立ちながらも、マイペースで飾らない様子が非常に爽やかで、とっても憧れていた存在。

昨年、もう何年振りかでパリで再会。
そして、今年はその時の約束通り、夫婦でパリに遊びに来ていた。


翌日、フランスを発つ前にメールが届く。
「レストランも藤田のチャペルもランス大聖堂も感激したけど、〇〇ちゃんがまた元気になっててなにより嬉しかった」


去年はそんなに元気がなかったのか。
会社の帰りに慌ててレストランに駆けつけた雨の夜を思い出す。


今年は何が変わったのだろう?
仕事、人間関係、家庭環境。
色々と思いを巡らす。

そうか、私が変わったのか。

心にロウソクの火が赤く点る。








にほんブログ村 その他日記ブログ つれづれへ
にほんブログ村

↑ クリックして応援していただけると嬉しいです
皆さんからのコメント楽しみにしています




2016年11月28日月曜日

チャペル







藤田はやさしく待っていてくれた。
切り取られた空間。
扉を開けて敷地に入れなかったのに、大きな腕で歓迎されたような気持ちになってしまう。

そんな優しさで包まれた場所





にほんブログ村 その他日記ブログ つれづれへ
にほんブログ村

↑ クリックして応援していただけると嬉しいです
皆さんからのコメント楽しみにしています

2016年11月20日日曜日

第三ステージ



バッタ達が大騒ぎの日曜の午後。
何事かと思ったら、末娘バッタの部屋に置いてあった壊れかけたベッドの解体作業。

数年前に、息子バッタが日本に帰る友達から譲りうけたもの。あんな大きなセミダブルの二段ベッドをもらっても、彼の部屋には入りきれないと思ったが、あんまり粘るし、彼にとってのとても大切な友達だったことから、ついつい許してしまう。案の定、のこぎりで板を切り、高さを調整して、漸く部屋に入れ込む。

が、二年ぐらいは使っていたが、どうしても部屋のスペースの有効利用とは言えず、大き目の末娘バッタの部屋に運び込んでいた。

普段は使わないセミダブルだったので、蒲団やらシーツを置き始め、物置化しつつあったところ、何度も解体し、運んでは作っていたからか、或いは、寿命なのか、横長の板が二つに割れ始め、困ったことになっていた。

壊れかけたベッドを解体し、マットレスだけは残し、日本の蒲団のように使おうと思ったらしく、解体され棒切れとなった板は、どんどんと地下のカーブに持ち運ばれていた。

そうしてベッドを片付けてみると、随分と埃が溜まっており、蜘蛛の住処になっていたらしく、掃除機を掛けながら、更に大騒ぎしている。

今度は火の粉がこちらまで飛んでくる。末娘バッタの部屋は我が家で一番日照時間が長いテラスに面している。そこに、マンゴは勿論、パイナップルの植木を置いておくのだが、それが虫を呼び寄せる原因とばかりに、責められる。

息子バッタなど、久々に妹の部屋に行ったらしく、パイナップルが余りに大きく成長しているので驚きを通り越して呆然。実もならないのに、こんな大きな植木は外に置くべきと主張。

ちょっと待ってよ。ママの大切な植木たちを勝手に外に出さないでよ。霜がおりたら、パイナップルはすぐに枯れてしまう。マンゴなど、目も当てられまい。

そうすると、板のフローリングが水で黒くなり、腐りかけていることを指摘される。そうか。確かにね。

では、と一階のサロンに移すことにする。冬は寒いけど、外よりはましだろう。

ママのすることなら、なんでも素敵なこと、と思っていた時代は既に過ぎてしまっていることは知っていたが、いやはや。

サロンに置くことさえ反対していた息子バッタだったが、ピアノの脇に収まったパイナップルを見て、肉厚の濃い緑の頑丈で先の鋭い葉が、意外に観葉植物としての魅力があることに気が付いたらしく、まあ、いいか、とばかりに、何も言わなくなる。

いつか、この家を出ていく時は、このパイナップル君と一緒かな。
そんな思いが、ふとわき上がる。

日当たりの良い部屋が一つと、使い勝手の良いキッチンがあれば、それでいいか。

まだ先のことと思っていたが、もうそこまで来ているのかもしれない。
第二の、いや、第三のステージ、が。








にほんブログ村 その他日記ブログ つれづれへ
にほんブログ村

↑ クリックして応援していただけると嬉しいです
皆さんからのコメント楽しみにしています


2016年11月13日日曜日

主のいなくなった洋服たち









バッタ達の小さくなった洋服。もとい、彼らが大きくなったから着れなくなった洋服。
一つ一つが思い出あって、頬ずりしたくなるものばかり。せっかくだから譲ろうと思いつつも時間がなくて、バッタ達が勝手に袋詰めにしていた。

10歳と8歳の女の子のママである知り合いに声を掛けると、二つ返事で見に来るという。
慌ててバッタ達の部屋から袋をサロンに持ち込むと、ある、ある。10以上もの袋がどっさり。

友人の子供たちは大騒ぎで喜んで自分たちに合ったサイズを探し回った。
友人は箪笥の余裕がないからと言いながらも、大きな袋三つにぎゅうぎゅう詰めにして、厳選した洋服を持って行ってくれた。

それでも、たっぷり残っている。取り敢えずは、大きな袋にぎゅうぎゅう詰めにした三つの袋を、寄付の箱に入れることにする。

末娘バッタが8歳の時に着ていたパジャマが今でも新品のように出てきた。
どこかの誰かが、このパジャマを喜んで着てくれると嬉しいけど。

色がかすんでいても、生地がしっかりとしていて、風合いある息子バッタの洋服はどうしようか。

寄付するに限るんだろうな。
まあ、もうちょっと、大切にとっておこうか。

かくして、漸く半分には減ったものの、相変わらず主のいなくなった洋服たちをどっさりと袋に詰め直す。

次の機会まで。




にほんブログ村 その他日記ブログ つれづれへ
にほんブログ村

↑ クリックして応援していただけると嬉しいです
皆さんからのコメント楽しみにしています


2016年11月12日土曜日

ひとりの時間を愛する人に






サイフォンからお湯が沸く音が聞こえだすと、
珈琲の香りが一気にキッチンに広がる。

熱いチリチリ感も、切れ味の良さも、味わい深い豊かな香りも、すべて心地よい。

ひとりの時間を愛する人にはぴったり。

ん?
ひとりの時間を愛せるようになってきたのかな。
二杯目をカップに注ぎながら独り言つ。







にほんブログ村 その他日記ブログ つれづれへ
にほんブログ村

↑ クリックして応援していただけると嬉しいです
皆さんからのコメント楽しみにしています

2016年11月5日土曜日

犬君へ








ひんやりとした早朝の空気に秋を感じながら、庭の緩やかなスロープを小走りに門に向かい、形だけの黒い鉄製門扉を押して外に出た瞬間、左足裏に違和感を感じる。そこにあってはならないものを踏んずけてしまった後味の悪さ。

ほんの数日前も同じことがあった。その時には、ゴミ箱を出すので大きい門扉を開けて外に出た瞬間、やはり、そこにあってはならないものを踏んずけてしまう。ここに引っ越してきて、もう10年以上になろうか。こんなことは、これまで全くなかった。

二週間のバカンスを終えての初日。勢いよく元気に学校に行くバッタ達が、朝一に門を開けて外に飛び出た途端、同じように踏んずけてしまったら、一日が台なしになってしまうだろう。

慌て、リラの枝を折り(実はリラの枝は、しなって、ちっとも折れてくれない)、葉を使って、ブツを処理する。そうしているうちに、乗ろうとしてたバスが通り過ぎてしまう。

左足に違和感を感じたままバスに揺られる。外は息が白くなるほど寒かった。前夜は遅くに帰って来たが、その時にはなかった。そして、ブツは気味が悪い程に柔らかかった。もしかしたら、体温さえ感じられたかもしれない。となると、早朝の散歩時の仕業に違いない。誰かが、意図的に、門の目の前で飼い犬に用をさせたに違いない。まぎれもない悪意を感じる取る。

左足に違和感を感じたまま電車に揺られている間、今度は対策を考えてみる。前回のブツをしっかりと除去しなかったために、同じような場所で何をしたに違いない。となると、酢でも撒くか。

その晩、バッタ達に、悪意を持った誰かが、飼い犬に人の家の門の前で散歩の途中に用足しをさせている、と怒り憤懣に告げると、笑われてしまう。

ママ、さすがに犬に、ここでしなさいとは誰も言えないよ、と。

おお、そうか。

ちゃんと拾わない飼い主がいけないんだろうけど、たまたま場所が家の門の前だったんだよね、と。

君たちは本当に素直に、人を疑わない素敵な若者に育っているよね。

そう思いながらも、お酢のボトルを持って外に出て、暗闇の中を散布。

犬君よ。君のご主人はどうやら身勝手な人みたいだね。でもさあ。歩道の上は止めようよ。みんなが歩く道なんだよ。ましてや、家の門の前はだめだよ。取り敢えず、お酢を撒いておくからね。君のテリトリーじゃないんだよ。威厳をもって、堂々と歩いておくれ。立ち止まっちゃだめだよ。





にほんブログ村 その他日記ブログ つれづれへ
にほんブログ村

↑ クリックして応援していただけると嬉しいです
皆さんからのコメント楽しみにしています



2016年11月1日火曜日

空回り








空回りする時は、一度立ち止まってゆっくりと深呼吸をしないと。

金曜の夕方にエトルタに行っている友人夫婦とジョインする筈が、宿の予約サイトとの相性が良くなく、最後まで予約承認がなされず、翌朝、支払った金額の払い戻し手続き終了との連絡が来る。

がっかりするが、金曜夜に慌ててオフィスを出たため、しっかりと週末の段取りをしていなかったことを思い出し、今度は慌ててオフィスに向かう。火曜が祝日なので、月曜を休みにしたので、四日間もオフィスを開けてしまう。土曜の午後。行きに車で一時間、帰りは二時間も掛けてしまう。それでも、重要なアプリが入ったPCがないことには、仕事もできない。

と、漸く夕方に家に戻りメールを何気に確認していると、月末の仕事にとって重要な書類を持ってきていないことに気が付く。まさか。いや、仕方あるまい。土曜の夕方のパリの混雑を思い、途中まで車で行き、そこからは電車とする。オフィスに戻れば、今度こそ忘れてはなるまいと、できるだけの書類整理をしてから、家に戻る。

なんだって貴重な土曜をオフィスとの往復に使ってしまったのか。午前中も仕事に使ってしまった。まる一日仕事。これって、なんの土曜なのか。月曜をお休みにするために、これ程のことをしなければならないって、ちょっとおかしいのでは。

日曜こそ、エトルタの友人夫婦にジョインしないと。とっておきのワインを倉庫から探し出し、日本酒も一本袋に入れ、もしものために、しっかりと研いだ包丁を二本、まな板と一緒に準備する。

秋は深まる。







にほんブログ村 その他日記ブログ つれづれへ
にほんブログ村

↑ クリックして応援していただけると嬉しいです
皆さんからのコメント楽しみにしています