2016年6月19日日曜日

青空にウィンク








オーブンでこんがりと焼いた生姜醤油に漬けた手羽、炊き立ての白米をメインにバッタ達とお昼を和やかにとっていると、「その食べ方は汚い」、「ちゃんとナイフを使え」、「音を立てるな」、と矢継ぎ早に息子バッタが末娘バッタの食べ方に注文を出す。

確かに、もっともなことなので放って置くが、末娘バッタが意に介さないのか、特に改めず、息子バッタがすごい剣幕で怒鳴り始める。

「ちょっと待って!どうしてあなたがそんなに叱るのよ!」

すると、「だって、○○ちゃん(長女バッタ)がいないんだもん!」との返事。一瞬固まる。

「ちょっと待って!ママがいるじゃない。子供にテーブルマナーを厳しく躾けるのは親の仕事でしょう?」 慌ててしまう。

今度はバッタ達が凍る番。

そして、皆で大笑い。

笑いながらも、ぎくりとする。そうか、母親不在の食卓で、ちゃんと長女バッタがマナーを厳しく教えてくれていたのか。胸がじんとする。そして、長女バッタがいなくなった今、息子バッタは自分の責任とばかりに、真剣に末娘バッタのテーブルマナーに厳しく注文をつけている。

バッタ達よ。君ら、本当に偉いよ。ママは幸せ者。
ありがとう。
遠い北京の空の下、長女バッタがにんまりと笑った気がする。
久々に気持ちよく澄み渡っている青空にウィンクする。







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2016年6月18日土曜日

メロン











腕が上がらなくなって、少し仕事のペースを落としたのも束の間、これまで以上にハードとなり、最終バスで帰る日が続くある夜、ぐったりと夕食をとりながら、バッタ達にその日の出来事をそれとなく聞いていた。

既に学校は夏休みに入っており、息子バッタはバカロレアのフランス語の試験、末娘バッタは中学卒業検定試験を受けるのみ。従い、バッタ達は一日我が家にいる寸法。その日の出来事を聞くといっても、朝は何時に起きたのか、どこかに出掛けたのか、特別なことはなかったのか、お昼は何を食べたのか、といった、極単純な内容。

で、その日はお昼にメロンを食べたと報告がある。む?週末に近所の八百屋で購入した、ちょっと大き目で美味しそうなメロンを思い出す。あれを昼に食した?

「ママの分は?」

驚くのはバッタ達。二人で食べちゃったよ、との答えが返ってくる。

なんですって?あのメロンをママがいない時に切り、しかも、ママの分を残さずに二人で食してしまった?信じられん!

急に頭に残っていたメロンの映像がビビッドになり、芳醇な香りを放ち、うっとりとする程ジューシーな実が現れる。

バッタ達にはママがそこまでショックとなっていることが分からない。
彼等の姿を見て、余計にブチ切れてしまう。

「ママが楽しみにしていたメロン様をよくも自分たちだけで勝手に食べたわね。」

真っ青になって泣きそうな末娘バッタ。その日の献立は人参のソテーとヤキトリにフライドポテト。「御飯を炊かなかったの」との身勝手な母親の発言に、顔がくちゃくちゃになる。

「ママ、昨日は野菜がないって言ったじゃない。だから野菜炒めを作ったんだよ。疲れて帰ってくるママをリラックスさせてあげようと思っているのに、いつも逆になっちゃう。」

おおおおっ。そうか。

半泣きの末娘バッタと、彼女と同い年ぐらいの自分の姿が重なる。いつも仕事から疲れて帰ってくる母の為、夕食の準備をしていた中学生の頃。母が当時バイブルとしていた魚菜さんの料理本を見て、ドライカレーを作って待っていた。会社から帰って来た母は、鍋を見るなり怒り出す。ドライカレーにポテトが入っているのは邪道だ、と。せっかく楽しみに帰って来たのに、これは何だ、と。

あの時、お母さん、仕事で嫌なことがあって、くさくさして疲れて帰って来たのか。そうだったんだ。40年前のもやもやが解明される。

がしっと末娘バッタを抱きしめる。ごめんね。ママが悪かった。人参ソテー美味しいよ。夕食ありがとう。

40年前のもやもやが解明されると同時に、メロン事件についても霧が晴れたようにすっきりする。

つまり、バッタ達にとってのメロンの価値と、私にとってのメロンの価値は全く違うものなのだということ。仏壇にお供えされているマスクメロンの姿なぞ、バッタ達は見たこともないし、彼らの頭ではメロンも甜瓜も一緒。ましてや、フランスでは二個幾ら、と普通に一般の食卓に上る果物として流通している。

これまた40年前、母たちにとってバナナが高級な果物だったことを聞いて驚いたことが甦る。

冷蔵庫に冷やしてある真っ赤なスイカを見て、きっとバッタ達にとっては、スイカもメロンも同じレベルの果物なのだろうな、と変に納得してしまう。

今度は、メロンは二個買うか。甘くて美味しいスイカを口に入れて独り言つ。


真っ暗な庭に真っ白な卯の花。







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2016年6月12日日曜日

夏は来ぬ







肩の調子がおかしいと思ったのが昨年のノエルの時期。
それから、腕が上がらなくなり、夜眠れなくなり、気が付くと左腕が使えなくなってしまっていた。衣類の脱ぎ着だけでなく、車の運転もままならない。ウィンカーが出せない。駐車場でチケットが取れない。

遂には腕を吊り、痛み止めを服用。それでも痛みは抜けない。
左手が使えないので、片手でPCを打つ。電話を受けて、メモが取れない。

近所の友人がパワーマッサージを施してくれる。別の友人が肩凝りに効く湿布を持ってきてくれる。

あれこれしているうちに、水仙が咲き乱れ、チューリップが色とりどりに顔を出し、鈴蘭が可憐な姿を見せる。リラが香り良く満開となり、杉の木を這い上がった藤がクリスマスツリーの如くきらめく。

そうして卯の花が咲く頃、我が家の庭は荒れ放題。

芝刈り機が使えないのだから。

三回、業者はドタキャン。友人に教えてもらった庭師も忙しいと断られる。私の背丈まで伸び切った雑草を睨みながら、とにかく業者、庭師に連絡を入れる。

ほどなく、二軒の業者が見積りをとりに来てくれる。
一社は7月に何とか時間を作れるとのこと。もう一社は若い二人が起業したばかり。再来週にもきてくれるとのこと。

でてきた額をみて仰天。日本への往復チケットが優に買えてしまう。

おおっ。。。

今年の夏は大人しく庭を愛でて、のんびりと腕の体操をしようか。

卯の花の匂う垣根に時鳥早も来鳴きて
忍び音もらす
夏は来ぬ





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2016年6月11日土曜日

花に託して







せっかくの返事のメールに相変わらず短気な返答をしてしまっていた。
電光石火のごとくといえば、むしろ褒め言葉になろうが、そうではなく、軽挙妄動。

ひねくれた反応に対し、当然何のリアクションもない。
そういうつもりはなくて、なんて甘い言葉なんてくるはずがない。

ここは、庭の片隅ですくっと背を伸ばし、可憐な花を開き始めた菖蒲に託そうか。
純白とクリーム色がちょうどやわらかいメッセージを伝えてくれるだろう。

読み手によってメッセージが変わる花言葉。
すっと心に届いて欲しい。






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2016年6月7日火曜日

卯の花






後悔しても幸せになれる

後悔しない人生なんて、何も考えないで生きているようで味気ない、などと、強がって何かの折に書いたらしい。

ある時、それを引用され、後悔する人は強いのよ、と言われてしまう。自分が選んだ道が間違っていて、それに対して自分が選んでしまった事を後悔して生きていけるなんて強くなければ出来ないと思う、と。

別の友人は、自分は後悔しないタイプだから何も考えてない組なのよね、と。幸せと思えば幸せ、不幸と思えば不幸、どうせだったら幸せの方が良いですものね、とも。

すごいな、それって。後悔しないんだ。
でも、別に後悔することのある私は不幸じゃない。

いっそのこと、何に一番後悔しているかってことを書き出してみる。


其の一
高校三年の時、帰宅したら父が胸をかきむしって苦しそうにしながら椅子で寝ている様子に怖くて自分の部屋に逃げてしまい、その後父が会社に出掛けた物音に安堵して何もしなかったこと。半年後に父は45歳で亡くなってしまう。

其の二
大学三年の時、付き合っていた後輩から遠くに行ってしまわないでと泣きつかれ、勉強せずに外交官試験を受けなかったこと。逃げる言い訳を探していた時に、思わず飛びついてしまった弱い自分。情けなし。

其の三
バッタ達の父親との愛を育む努力をしなかったこと。冷静に今思えば、結局はそういことだろうな、と思う。

其の四
。。。こんなところにしておくか。

ただ、大切なことは、私は幸せだってこと。

後悔しても、幸せにはなれる。そう思えた瞬間、単純に気が楽になる。

やっぱり、真摯に人生に向き合い、後悔しながらも、幸せに生きていこう。それ以外はできないものね。




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2016年6月6日月曜日

頑固な親







末娘バッタのお友達のお母様から、来週月曜のパーティーの送迎について声を掛けてもらう。しかし、そもそも、来週月曜に何かあるとは末娘バッタからは聞いていなかった。
どうやら夜の8時半から零時まで。送るので、帰りを宜しく、とのこと。
末娘バッタも行くと友達には言っていたらしい。

ちょっと待て?月曜の夜?これって、次の日仕事する一般人など考慮していない行事?

帰ってくるなり、末娘バッタに問いただすと、どうやらママに言うタイミングを失っていたらしい。

そりゃあ子供達は来週月曜はもう学校がないからいいが、一般のサラリーマンは仕事がある。こんな、子供万歳、親はタクシー的な扱いを堂々とやってのけるご家庭にはついていけないし、そんなところに行ってはならん!とガツンと言い放つ。

その後、ぼそぼそと言う話を聞くと、なんと、クラス全員が招待されていて、ほぼ全員参加とか。

えっ?普通のご家庭では、それってありなのか?
とてもじゃないが、翌朝6時起きだし、子供の為にそこまでできないと思っていたが、私が間違っているのだろうか?

なぜに金曜や土曜じゃないのか。月曜、学校がないなら、日中でもいいではないか。子供達で何とかできる時間帯にして欲しい。

しかし私の考えがおかしいのか。他のご家庭では皆OKしたのか。それこそ、驚いてしまう。

どうしよう。我が教育方針、大袈裟ながら人生への矜持。

人様に自分の意見を押し付けることはせずに、ここは静かにひっそりとしていよう。
娘よ。頑固な親ですまない。





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2016年6月3日金曜日

こんな日もある







こんな日もある

目覚めると、珍しく眩暈。
外は雨こそ降っていないが、どんよりとした雲が空を覆い、未だ暗闇。

携帯はLINEで複数のメッセージ受信を知らせている。

日本からの調査依頼、
まさかの良くない結果、
報告書の提出期限が今日であることの確認。

電車に乗れば、SMS。
ちっとも頼りにならないオフィスの若者からの具合が悪いから休むとの知らせ。



こんなことなら、もうちょっとベッドでまどろんでいれば良かった。

のんびりと目覚め、子供達にキスをし、朝食には目玉焼きでも作ってあげる。
そしてゆっくりと珈琲を淹れる。

薬缶が楽し気な音をさせながら真っ白な湯気を立て、深くローストした馥郁たる香りが漂い始める。
柔らかな朝のキス。


そんな一日のスタート、最高じゃないか。







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