2015年11月24日火曜日

慌てずに待つ







急いでメトロに駆け込むと、既に二件のSMSを受信している。どうやら相手は既に待ち合わせ場所に着いたらしい。約束の時間より15分も早い。

こちらは早く駆けつけたい気持ちはあっても、恐らく早くて15分遅れ。相手を30分待たせることになる。

「今、飛んで向かっています。」そう返事をする。

乗り継ぎのタイムロスを少なくすべく、駆け足になる。が、プラットホームに入った瞬間、これはまずい、と悟る。どうやら危険物回避の為、利用路線の一部が不通。約束の場所に辿り着くには、迂回し別の路線を乗り継ぎ、どこかでタクシーを拾うしかない。泣きそうな思いで電話をする。と、あっさり、仕方ないよ、との返事。

「私が良くない!」と叫んでみても、どうあがいても約束の時間はおろか、今日中にはたどりつけそうにない。

タクシーで駆けつけると言うと、そんなに無理しても一時間以上はかかるのだから、と言われてしまう。

どうして、そう簡単に諦められるのだろうか。どうして待っていてくれる、とか、迎えに来るとか言ってくれないのだろうか、など、思ってしまう。そして、相手だって約束を反故にされるのだから、いわば被害者ともいえる立場なれど、何ら提案も、救いの手も差し伸べてくれないことに、怒りさえ感じてしまう。


取り敢えずは、この場を脱出せねば。漸く頭がそちらに動き、次のアクションの為に身体が動き始める。プラットホームを動かない人々は、いつ動き始めるか分からない電車を待つことにしたのだろうか。

近くの別路線の駅に行こうと判断し、その方面に足を進めるが一向に駅のサインが見えてこない。駅員をつかまえて聞くが、あそこのエスカレーターを上って、右に、としか教えてもらえず、エスカレーターを上がって右に行くと、そこには氷雨が降る夜が待っていた。

なんとも惨めな話ではないか。

思い切り雨の中彷徨うが、まさに言葉通りさまよってみても、目的の駅は見つからない。
プラットホームでじっと動かずに待っていた大衆を思い出す。そうか。慌てずに待つことも選択肢の一つではないか。

改めて慌てて辿った道を戻り、のんびりとプラットホームに戻ってみる。と、丁度電車が滑り込み、構内アナウンスは次の駅で停車と注意喚起のメッセージを流しているが、乗ってしまう。電車内では別のアナウンスが静かに流れ、なんと、約束の場所まで問題なく動いていることが分かる。それでも、約束の時間を大幅に遅れてしまっての到着となる。そして、相手は既にその場を離れてしまっている。


夜の雨の中をさまよったことが奏功したのか、それまでの焦りの気持ちがすっかりとなくなっていた。


また別の日に会うことにすればいい。
慌てずに待つことも選択肢の一つではないか。







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