2015年2月15日日曜日

天空に響き渡る透明な音色






「宇宙の秩序を思わせる、彼の身体から発せられる、あの天空に響き渡る透明な音色。その瞬間、彼の内部では全ての物事がすっきりと調和し宇宙と繋がっているんだ。でも、そんなこと、本人は意識もしていないし、理解もしていないのさ。」


ゆるやかながら日差しに温もりが感じられるグループレッスンがあるいつもと同じ土曜の午後。井戸端会議のように、外のベンチに数人の親たちと座り込み、ティーンを持つ親の悩みや、ヴァカンスの計画、美味しい店、手ごろなケーキのレシピなど、他愛ないことを話題にし、のんびりとしていた時のこと。


何故そんな話題となったのか。幼い子供を持つ父親が、自分の子供たちは未だ偉大な音楽家ではないが、人間にとって音楽というものが如何に大切か、それが人間形成にとってどんなに価値あるものなのか、と話し始めた。そうして息子バッタのヴァイオリンのことを言及。雷に打たれたような衝撃が走る。


別の父親がバッタ息子と同年代の自分の息子の話をし始めたことで、それ以上の会話はなかったが、思わずひれ伏して涙したくなってしまう。彼の言葉こそ、天空に響き渡り大地を唸らせるものであり、その瞬間、宇宙に意識が飛んでしまう。


果たして。
その夜、父親との一週間のヴァカンスに発つとき、ヴァイオリンを背負っている姿に、改めて衝撃を受ける。あれ程父親の前でヴァイオリンは弾きたくないと頑なであったのに。


悟りは求めるものではなく突然訪れるものなのか。
新芽になるのであろう茶色の膨らみを沢山枝につけ、木々が風に揺れる。






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2015年2月8日日曜日

ベルガモット効果



初めてその存在を知ったのは一年前。
どうしても会いたくて街中を探し回るが、どうも見つからない。ひょっとするとパリならば、と友人にSMS。思った通り、彼女は知っていたが、もうどこにも見当たらないと言う。

忘れていた頃に、その存在を知るきっかけを作ってくださったご本人からメールが舞い込む。今よ、今なら出会えるわよ。そう囁かれていた。

一年前と同じように期待を胸に街に出掛ける。今年は息子バッタが一緒。彼には求める相手への思いをちょっとだけ伝えてあった。白く息を吐く人々で街は賑わっていたが、思い当たるところを捜しまわっても、見つからない。似たような仲間たちは大勢いるが、本人ではない。最後に寄ってみようと、街外れの通りから、もう一本中に入り込んだところに行ってみる。と、本人がちゃんといるではないか。

すっぽりと手に入る大きさに意外さを感じる。思わず鼻を近づけると甘い香り。ベルガモット。

一個の値段ではなく、キロの値段であることに良心的なお店だと感心する。と同時に、レモンやライムを一個の値段で売る最近のお店がおかしいのだろうと感じる。拍子抜けするほどの手頃な値段で、あれだけ願っていた相手を手に入れてしまう。






あれは何年前だろう。バッタ達が未だ幼くて、パパが出て行った翌々年の、丁度今頃。ドイツに一週間の出張となり、急遽母が日本から応援に来てくれた。三日目だったか、講演中に携帯が震える。母から。そっと席を立ち廊下に出て慌てて電話を入れる。いつもなら元気に満ち溢れ太陽の明るさを持った声が電話口に響くはずなのに、どうも沈んでいる。話を聞いて、ことの重大さに真っ青になる。我が子を喜ばせようと、小一時間かけて歩いてショッピングモールまで行き、自転車を購入し、乗って帰る途中横転してしまったという。なんとか家にたどりついたが、鏡をみると顔面は腫れ上がり、足は怪我で出血。医者に行った方がいいのかもしれないが、どうしたらいいのか、ということだった。

近所の友人にSOSコールをし、救急病院に連れて行ってもらう。最終的に骨や脳に異常ないことが検査で分かるが、顔は二倍に腫れ上がり、水も飲めない程。足の腫れもひどい。一週間の予定がひと月は我が家で安静にしなくてはならなくなってしまった。あの時、少しずつ回復していく母が、漸く口にできた飲み物がアールグレイ。怪我をするまでは、毎日カフェが楽しみだったのに、身体が欲求しないと言う。そして、ふと口にしたアールグレイの香りが、心までも癒す効果を持っていることに気が付いたと教えられた。

それから、我が家ではアールグレイを常備している。フランスではベルガモットと呼ばれていることを知ったのも同じ頃。今も私が朝8時に出社して、真っ先に口にするのが、アールグレイ。ベルガモットの香りに、心が満たされ豊かになる思いがする。

そんな思いがあるベルガモットだけに、それが柑橘類で、しかも手に入り、それを使った料理が楽しめると知った時には小躍りし、どうしても欲しくなってしまっていた。ところが、ベルガモットの季節は短いらしく、いつでもマルシェに出回っていないことが分かる。それが一年前。今年も、その時期を逃しそうになっていたが、ベルガモットの存在そのものを教えてくださった fleur de selさん が、今が旬よ、と教えてくださったことで、念願の出会いが叶えられた。

さあ、 fleur de selさん のベルガモットを使ったケーキ を!
ベルガモットの皮を削る度に、甘い香りがキッチン一杯に放たれる。一つの実から予想以上にたっぷり採れる果汁を入れて、甘さ控えめのケーキを焼き上げる。真っ先に日本の母に持っていきたいと思ってしまう。そして、一年前にベルガモットの話をしたパリの友人に連絡がしたくなる。彼女とは、ちょっとしたことで連絡が途絶えていた。彼女が悪いわけではなく、私の変な意地がそうさせたのだと反省する。仲直りにベルガモットケーキを贈ろうか。勿論、さっきから、何度もオーブンを覗き込んでいるバッタ達にも食べてもらおう。明日会う予定になっている友人にも一切れ持っていこう。

心は優しさに満たされ、ベルガモット効果は最大限に。
きっと fleur de selさん も今頃ご家族の皆さんと一緒に心豊かにベルガモット効果を大いに楽しんでいらっしゃるものと思う。









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