2014年10月25日土曜日

香ばしさに包まれた秋の夜



ママのこと待っていたよぉ。
香ばしさが家中を包んでいる。こんなに遅くまで待っていないで、さっさと食べて、との思いも一篇に掻き消えてしまう。オーヴンには鶏の腿が黄金に色付いている。

レンズマメ、ズッキーニと人参と長ネギのソテー。なかなかどうして立派なもの。鶏の味付けを聞くと「ヴァニラ味」、「キャラメル味」、「チョコレート味」とバッタ達が口々に勝手なことを言う。なんだか最近妙に大人になって、変なママの真似をするから手に負えない。当たり前のことを聞いてくれるな、といった時には、大抵とんでもない答えをしていたツケか。

と、テーブルの中央に、これまたこんがりと色付いた、若干沈没しているケーキが鎮座している。ほぉ、中にカスタードクリームでも入れるの?と、言えば、末娘バッタが必死の面持ちでベーキングパウダーが多過ぎたの、と主張。いや、そのぉ。ベーキングパウダーなるものの働きをちゃんと教えてあげなきゃなるまい。「違うのよ。最後まで待たなかったからだよ。オーヴンの中ではふっくらとしていたもん。」とは、長女バッタ。いや、時間通りだったと末娘バッタ。

にやにやとしながら会話を聞いている。料理上手になるには、経験が大きな決め手となろう。レシピ通りではなく、その日の天気、気温、オーヴンの調子、材料の質、などたくさんの要素によって結果が変わることの妙を肌で感じ取り、応用していかないと。

それにしても、何味なのか。

「えっとねぇ、『R』から始まる、かな?」と、長女バッタ。

Rねぇ。。。
一口食べてみる。歯が痛くなるほどの甘さが押し寄せるが、とても良い風味。「はちみつケーキ?」

「Rhachimitsuねぇ。まあ、言えなくはないけど、違うよ。」ニタニタしている。

二口目で、ああ、これはレモンの香りだ、と思う。
末娘バッタが、今度は泣きそうな顔で、レモンの半分が皮が変になっていて使えなかったこと、だから分量通りに入っていないこと、を告げる。
大丈夫、十分美味しいよ。それより、お砂糖、どれぐらい入っているの?

聞いてみると、小麦粉120gに対して砂糖230g。
おおっ!これはちょっと甘すぎたねぇ。それでも美味しいよ、ありがとう。

バッタ達が賑やかにフランス特有の『quatre-quarts』について好き勝手に話している。卵、バター、砂糖、小麦粉、この4つの材料が同じ量だから、4分の1が4つ、といったネーミング。末娘バッタのケーキは、砂糖が小麦粉の二倍だから、これは甘すぎと言えよう。カップ一杯づつの間違いだったのかな、とちょっと思う。が、まあいいか。

えっ?で、なんで『R』から始まるの?レモンでしょ?

「今頃気が付いている!」長女バッタと末娘バッタが顔を真っ赤にして大笑い。

ん?ん?ん?
あっ!そうか!「Remon」なわけね。日本人が『R』と『L』の発音を区別しないこと(聞き取れないこと、発音できないこと!)を笑いものにしたわけね。

やれやれ。君たち、ママをそう馬鹿にしちゃあいかんよ。
そう思いながらも、こちらもつられて笑ってしまう。だって、本当に『R』と『L』って区別できない。しょうがないよ。笑うしかない!

こうして秋の夜が更けていく。







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