2013年6月4日火曜日

会いたくて



牡丹の甘苦しい香りにため息をつき、
動かない携帯の画面を見つめる。

メッセージ着信を知らせる機能が作動しなくなって、
もう一年になるか。

大人の自分でさえ、
持て余しているのに
子供たちはどう自己管理をするのだろう。
いや、自己管理など所詮大人も子供も似たり寄ったりであろう。

ある日突然太陽が東の空から昇らなくなった時のように、
何の音沙汰もなく、
沈黙が続き、
沈黙こそが全てを物語っているとさえ思え始め、
心がざわざわと波立ち、
絶望的な思いに追いやられる。

と、
何事もなかったかのように、
メッセージが舞い込む。

そうか。
曇り空の日は、日の出は拝めないのか。

当たり前のことに今更ながら気付かされる。

それなら、と、
大気圏を突破してみると、
そこは宇宙空間。
空気もなく、気圧もなく、
ましてや気温など存在しない。

雨の日に太陽が拝めなくてもいいじゃないか。
雨の滴に太陽の香りが満ちている。
曇り空に太陽が拝めなくてもいいじゃないか。
大気に太陽の温かさが満ちている。

メッセージが届かなくてもいいじゃないか。
あちこちに痛い程存在が感じられる。
そっと目を閉じる。



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