2012年11月30日金曜日

満月の夜に



悔しいと思うと、
涙が頬を伝いそうで、食いしばる。

都会の薄明るい夜空でも
くっきりと真ん丸な月が輝いて見えるが、
兎の耳の形さえ慰めにはならない。

空きっ腹にアルコールがいけなかったのか。

これが18年間務めてきた会社での集大成なのか。

悔しい。
何が悔しいかって、
あの、こまっしゃくれた火星人のような、10センチもするヒールを履く、
世間なんて、ちっとも知らない、
舌足らずの彼女が言ったことが、
実は、当たらずと雖も遠からず、であるから。

しかし、あんな言いようがあろうか。

気がつくと30キロはスピードオーバー。
夜の高速をガンガンと飛ばしてしまう。

バッタ達はひっそりと寝静まっている。
と、長女バッタが出てくる。

一通り捲くし立てる。

「ママさぁ。
そんなの、真っ直ぐに受けないで、はぐらかして答えないと。」

そういえば、成績会議はどうだったの?

あっという間に消えてしまう。
母親の憤懣が我が身に落ちることを上手に避ける術をすっかり身につけたらしい。

熱いお風呂に入りながら、
ぎょっとする。

そうか。。。

あの時。
そう、昔むかし、
日本で会社を辞める時に、
大変お世話になった、別の部署の方々が、壮行会をしてくださった。
確か、後楽園近くの飲み屋。

あの時、
お酒をいただき、好い気になっていたのだろう。
うかつにも、入札案件が無事落札する割合を聞いてしまった。

普段は静かで、落ち着いた部長が、
震える声を振り絞るように、
「僕は滅多なことでは怒らないのですがね
と仰った。

しまった、
と思ったときは既に遅し。

どう謝ったのだろうか。
うやむやにしてしまったのか。

あの時のヒヤリとした思い、
胸の底に冷たく走った思いが、
甦る。

若さ、なのか。

今になって、
あの時の自分の発した言葉が、
宇宙を巡って、
戻ってきたのか。

重い心を引き摺って、
それでも、気になることがあったので、
仲間達に連絡メールを送る。

つい、甘えて、
今晩は色々あって落ち込んでいる、
とのフレーズを滑り込ませてしまう。

今朝、オフィスでメールをチェックしていると、
朝の5時きっかりに、
メールが入っている。

「どうした?大丈夫?」

嬉しさと、甘えた自分を見透かされた思いが交錯する。

午後に、
別の連絡事項もあって、
かつ、
つい、誰かに慰めて欲しい気持ちが働いて、
気がついたら長いメールを書き送っていた。

それでも、
以前、友人から、自分の辛さを人に言って、慰みを求めることほど醜いことはないから、そんなことはしなさんな、
と忠告されたことを思い出す。

厳しい忠告ではあったし、
正に傷口に塩ではあったが、
おかげで強くなれたかもしれない。

すぐに長い返事が来る。


会社のことで辛い思いをしたんだね。
これまで、どれだけ多くの工場で働く労働者達が不当な扱いを受けてきたか。
そうして、今、それが、高等教育を受けた、優秀で、能力のある人材にも及んでいる。
資本主義は容赦しない。感情なんてない。
喰うか喰われるか。
それだけがルール。

こんな言葉が慰めになるとは思っていないよ。

いつだって必要な時は泣いていいんだし、助けを求めていいんだよ。
泣くことは、悲しみや孤独を振り払ってくれる。

いいかい。
今、君の会社で起こっていることは、ちっとも個人的なことなんかじゃないんだよ。
君でも、君の仕事でも、そして恐らく君の会社が問題でもないんだ。
喰うか喰われるか。
それだけなんだよ。

と、言うことはだよ。
君のその凄まじいばかりのエネルギー、君の心の豊かさ、君の魂には、ちっとも変わりはないんだよ。いや、この時期を経験することで、君は人間的にもっと豊かになっていくのかもしれない。

君を愛する全ての人々にとって、君はいつだって我々の君なんだ。
君はいつだって僕の心の妹なんだよ。


涙が止まらない。


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2012年11月29日木曜日

星屑のようにこぼれてくる思い出


朱色の革のローファー。甘ったるいレモンタルト。バウンティ。長いストレートの黒髪。ぱっちりとした目元。

バスの中で隣になって交わした会話。

星屑のように、きらめきながら、こぼれてくる思い出。

今朝、まだ夜の帳が開けやらぬ街を歩きながら、
コリアンダの香りのする常夏の地にいる彼女を思う。

そこだけぽっかりと明るいパン屋さんのショーウィンドーに、
ふっくらとしたバニラとチョコのマフィンが目に入る。

会いたい。
そんな思いが強く膨らみ、
気がつくと駆け足に。



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2012年11月27日火曜日

ブラックフライデー



感謝祭とは無縁のフランスでも、
FnacからMac商品10%割引の知らせが
SMSで送られてくる。

息子バッタが大はしゃぎし、
iPadミニが欲しかったと、
くしゃくしゃのお札の束を持ってくる。

締めて185ユーロ。

ちょっと、待て。
定価330ユーロ。
割引があっても、それでは足りない。

迷いつつも、押される格好でFnacへ。

デモ商品を喜々として使いこなし、
あっと言う間に日本語環境に設定。
山上憶良の歌などチェックしている。

一体、誰に教わるのか。
にくい程、親へのプレゼンが上手い。

OK。不足分は手元の商品券でなんとかしよう。

ところが、
会計の段階で、
iPadは割引の対象ではない、と言われる。
では、せめて、Fnacによる100ユーロお買い上げにつき10ユーロの返金サービスをお願いする。
が、それも対象外という。
広告の下に小さな字で、但し書きが記載されているに違いない。

お店、メーカー、そして息子バッタにも騙されたか。

ブラックフライデー。



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2012年11月20日火曜日

心ここに在らざれば



霧立ち込める朝、
ヘッドライトでロータリーの真ん中に
モミの木がそびえ大きなリボンが飾られている姿を確認し、
仰天。

まさか。。。
いや、そのまさか、
ノエルの飾り。

実は、昨日、
今週木曜かと楽しみしていたボージョレヌボーが、
既に先週木曜に解禁されていた事実を知り呆然。

街角を歩けば、
嫌でも目に入るボージョレヌボー到来のニュース。
スーパーでも山積みに飾ってある筈なのに。

心不在焉、視而不見、聴而不聞、食而不知其味


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2012年11月18日日曜日

外では冷たい秋の雨



朝の5時から休む間もなく、
朝食は抜いて、ランチは運転をしながらサンドイッチを二つ。
そんな一日を終えて、
バッタ達がいない我が家に戻り、
魂が抜けたかのごとく、
椅子に座りこんでしまう。

もう一度、確認する。
着信なし。

忙しいに違いない。
大変なのに決まっている。

でも、
もう一度、確認して、溜息。

今日が、私にとってどんな日か、良く知っているはず。

応援の一言や、
労いの一言が、
或いは首尾を問う一言が
あっても、いいじゃないか。

そう思い始めると、
そんな思いが溢れ出してしまい、とどまることを知らないない。

そんな風に思っちゃいけない。
求めちゃいけない。
期待しちゃいけない。

でも、甘えちゃいけない、ってことは、
なんと辛く、悲しいのか。

『ちっとも褒めてくれないのね。』

そうSMSを送る。

返事はない。
諦めて、本を読み始める。

夜更けになって眠るころ、
メッセージが入っていることに気がつく。
bravissimo !!!

なんとなく、はぐらかされた思いで、眠りにつく。

翌朝。
掟を破る。

どんなに一緒にいて欲しかったか。
心の支えが欲しかったか。
不在は堪えた。

そう書き送る。

今度はすぐに返事が来る。

『一日中ずっと心配していたよ。それを伝えることができなくて、感じさせることができなくて、ごめん。』

外では冷たい秋の雨。



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いざ出陣


ここ数日寝ていなかった。

大きな会議を控えて、それに向けての準備。
7人の侍の足並みは揃わない。
それでも、
なんとか、皆で集まり、方向性を確認。

一人、都合が悪くて欠席した侍から、
翌々日あたりに電話。

当日のプレゼン用スライドが回ってきていないとの抗議。

だって、そんなん、未だできていない。

出来ているところまででも、せめて見せて欲しいとのこと。
当日、知らさせるなんて、嫌だ、と。

だったら、どんなことをしても火曜の会議には出て欲しかった。
彼女に説明している暇も時間もない。
しかも、彼女のこと。
これまで悉く反対してきて、折れることをしらない性格は良く知っている。
だから、
最後に大騒ぎするかもしれない。

結局は、私が全てのスライドを見直し、編集し、訂正を入れ、日本語訳をつけることに。

彼女の催促のお陰で、結局は夜なべし、
ただ、そのお陰で、取り合えず形にはなる。

それから、最後の詰め。
侍の長から電話。
午後に二つも重い会議があったので、とても夜に会って見直しなんて出来る状態ではない、と。
だから、当日となる翌朝早くに会おうと。

こちらも、疲れが溜まっていたので、1時間未満の早朝のミーティングに賭けることの恐ろしさを思いながらも、快諾。

そして、当日。
朝、5時に起きて、新鮮な冷たい空気を肺に吸い込む。

熱々のクロワッサンを抱えて長が来る。
雑然としたキッチンで、
コーヒーを煎れながら、
立ち話。
色々気になるポイントを挙げて最終チェックをしながら、
最後のスライドまで目を通す。

よし。

その日はコンサートとも重なっており、
バッタ達の白いワイシャツや黒いスラックスを用意し、
寝起きのバッタ達に声を掛け、
出陣。

会場の門には、
既に案内状が貼ってある。
侍の一人が首尾良く手配してくれている。

よし。

受付で準備をし、スタンバイOK
ほっとして、湯気が出ているミラベルのスペシャルドリンクを飲んでいると長がやってくる。

何を飲んでいるの?

え?スペシャルドリンク。
飲む?

ちょっと躊躇ったが、なんとなく、彼の好奇心旺盛な瞳に、そう応じてしまった。
多分、遠慮するだろうと思って。

あ、ぜひ、頂くよ。

え?これ、だって、長女バッタが母の日に買ってくれた特別マグなんだけど。
このマグに口をつけて飲むの?

一瞬、そんな思いが過ぎるが、
連帯感がそうさせるのか、嫌な感じはちっともしない。
むしろ、嬉しくさえなってしまう。

ふむ。ありがとう。

どう?ちょっと特別でしょ?
これで私、いつもエネルギーの塊なのよ。

はっはっは!
元気な笑い声が返ってくる。
それだけじゃあ、ないよ!

それに、これ、好きだよ。美味しいね。

あら、気に入ってくれたなら、瓶をプレゼントするわ。

いいよ、いいよ。レシピを教えてもらえれば、作るから。

ふふん。でも、家にミラベルの木がある?
これって、ミラベルの実が鍵なのよ?

嬉しそうな笑顔が返ってくる。

よし。
これだけリラックスしているなら、大丈夫。

おはようございます。

冷たい朝の空気をともなって、
ゾクゾクと出席者が入ってくる。
会議の開始時間ぴったりに、
出席者が定足数に達っしたことが分かる。

さあ、会場に行こう。
スペシャルドリンクを手にして。

演壇の長と目が合う。

よし。
いざ、出陣。


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2012年11月9日金曜日

君の特別な日に




一人で背中にバイオリンケースを背負って、
三日間のオーケストラの研修に参加した君。
1時間半、バスに乗って、電車を乗り換えて、たった一人で通った君。

ママ、やってみるね。

そう言って、朝早く、水とバナナとランチを持って、張り切って家の門を出たね。

今回は、お姉ちゃんもお兄ちゃんも、オーケストラの三日間の研修はシンドイと、
お休みすることを選んだのに。

最後の日に、ミニコンサートがあるという。

でもね、ママ。きっと歌を歌うだけだよ。

そんなことを言うので、なんだか、拍子外れ。
それでも、朝から夕方まで練習して、満員電車にもまれながら帰ってくる君を思って、
今日は皆で駆けつけたよ。

そうしたら、
驚かせてくれるじゃない。
3バイオリンのシェフをしっかりと勤め、
時には、君が指揮を振る。

皆から好かれて、
声を掛けられている様子を見て、
グレーのTシャツをほっそりと着た姿が、
やけにしっかりとして見えて、
ママ、驚いたわよ。

アンコールの後、
また、君が指揮台に立つ。
その時、
指揮の先生が、君に、『お誕生日、おめでとう』って囁いたよね。
ママ、泣きそうになっちゃった。
最高のお誕生日のプレゼントになったね。

そうして、
その後で、皆で乾杯したときに、
サプライズの誕生ケーキが、蝋燭11本をゆらめかせながら
歌とともに会場に入ってきたよね。

仲間達に祝福されて、
こんな豪華な誕生会はないよ。

夜には、
お姉ちゃん、お兄ちゃんによる特製バナナスプリット。
たっぷりのクリームにとろけるチョコ、アーモンドスライス。
バナナとキーウィーとオレンジの色合いが美しかったね。

ママは、なあんにもしなかったけど、
こうやって、仲間達や、きょうだいに祝福される君を
とっても嬉しく思うし、誇りにも思うよ。

11歳、お誕生日おめでとう!



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2012年11月4日日曜日

オレンジ色のカボチャポタージュで乾杯




ちょっと軽めで
それでいてパーティーっぽく。

15歳の誕生日のディナの長女バッタのリクエスト。

お寿司には目がない彼女。
サーモンのタタキ、イカ刺、いくら、海老のチラシ寿司にしようかな。
軽くパーティーっぽく、となると、カナペなんてどうかしら。

新鮮な野菜・果物が手に入るお気に入りのお店に行く。
美味しそうなチーズを数種。
人参、かぼちゃ、季節のキノコ数種、キュウリ、
パイナップル、林檎、葡萄、バナナ、ミカン、グレープフルーツ、
ミルティーユ、フランボワーズ、苺。
オリーブ各種。

我が家に戻って、
今夏の特製ミラベルジュースでゼリーを作って、大きなワイングラスに入れて冷蔵庫に。

掃除機を徹底的に掛けて、
ベッドメークをし、
庭の薔薇の蕾を玄関に飾る。

そうこうしているうちに、
バッタ達が帰ってくる。

さあ、さあ。
パーティーを始めようか。

カボチャスープを作っている間、
息子バッタと末娘バッタがチーズのカナペを担当。
葡萄のぷっつりとした粒に、
ロックフォールを挟む。

長女バッタはアボカドでワカモレ。

ヤリイカをおろして刺身に。
ゲソはシャンピニオンと醤油炒め。

塩と黒・赤胡椒、コリアンダー、砂糖を絡ませておいたサーモンを切る。
ピンクのサーモンを並べ、真っ白なイカで飾りをつけると、
なかなかの一品。

チーズカナペの方も、豪華になっている。
サラミを薄切りにして、出来上がり。

オリーブはお皿に各種盛り合わせ。
プチトマトも一緒に盛る。

ぷるるんと固まったゼリーには、ミルティーユの粒を散りばめ、
フランボワーズを飾り、
ホイップクリームをちょこちょこっと載せて、
苺のスライスで飾りつけ。
庭のミントも香りに。

さあ、デザートも準備オーケー。

ヴィヴァルディのコンチェルトが流れ出す。

グラスにオレンジ色のかぼちゃスープを注いで、
みんなで乾杯しよう。

15歳、おめでとう。



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2012年11月3日土曜日

13歳、おめでとう



あたり一面、真っ白。
バッタ達と大騒ぎしながら、雪道を歩く。
雪滑りが大好きなバッタ達。
率先して雪の中を滑り込む長女バッタと息子バッタ。

と、青いスキーウェアが空を舞う。
どうやら、飛び跳ねたらしい。そして、着地。
痛そう。
雪道とはいえ、固く踏みしめられた道は硬いに違いない。
泣くぞ。
そう思っている間にも、青いウェアが転がり出す。
どうやら、着地地点は坂になっており、そこを転がってしまう。
止めさせなきゃ。
ピンクのスキーウェアが駆け出す。
長女バッタ。
その後を末娘バッタと一緒に追い駆ける。
が、今度は青いウェアが視界から消える。
どうした。
まさか。
川に転がり込んだらしい。
この雪の中、水の中に。
ぞっとする。
本人は意識がないのか、或いは川の流れに勢いがあるのか、
無抵抗で青いウェアが流されていく。

声が出ない。
声を出さなきゃ。

「助けてくださいっ!!!」

振り絞った自分の声で目が覚める。
夢?

暫くは震えが止まらなかった。
それにしても、夢にしては純白の雪、青とピンクのウェアなど、
なんと色彩豊かであったか。
それに川の流れ。

息子バッタ。
今日、13歳の誕生日を迎える。
ティーンに仲間入り。

息子よ。
ああ、なんと情けない夢を見てしまったのだろうね、ママは。
きっと、君なら、
現実の君なら、
滑って転んで、着地が悪くとも、バツの悪い顔をして、自分の力で這い上がるに違いない。
もしも、そこが坂で、転がってしまっても、なんとか足を踏ん張って、転がる自分を抑えるに違いない。
そして、仮に、仮に、急な流れの川に入ってしまっても、
その頑強な腕で、やっとばかりに水を掻き分け、ざぶんと起き上がるに違いない。
そうして、うぉう冷たかった、と犬のようにぶるぶるっと身震いして水を切り、
早く温まろうと騒ぐに違いない。

そう、現実の君は、もうすっかり大きくなって、
ママの背だって追い越して、
力だって誰よりも強く、
いかなる困難にも立ち向かえる勇気と知恵と体力が備わっている。

13歳、おめでとう。


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2012年11月2日金曜日

ひとりで迎える朝



電子音の目覚ましが6時を伝えるよりも
ずっと前から身体が起床のサインを送っていた。
冬時間に移行したばかりなので、未だ身体が覚えていないのであろう。

それなのに、
電子音を消してからも、爽やかな朝を満喫しようとの気持ちが湧いてこない。
疲れが澱のように溜まり、身体がだるい。
夢見が悪い日が続いているからか。
昨晩中、しとしと、しとしとと降り続いた雨音は、
子守唄にはなってくれてはいなかった。

それでも、と、
慌てて覗いた携帯の時間は69分。
拍子抜けする程、余裕がある。

ガラガラと音を立てて雨戸を開ける。
暗闇が広がっているだけなのに。

それでも、と、
バッタ達の部屋に駆け込み、
ガラガラと音を立てて雨戸を開ける。
主がいない部屋とは、これほどにも寒いのか。
南に面していて、陽が一番当たるからとマンゴとパイナップルを置いているが、
大丈夫かしら。
暗闇の中で、ピンと張っている葉を確認する。

と、何やら外が明るい。
最近引っ越してきた一家が、巨大な銀の外灯でも取り付けたのかしら、
一晩中点けっ放しにしてしまったのね、
と思い、
首を大きく捻って、光源を確認しようとする。

え。
まさか。

銀の光に照らされたベランダがくっきりと浮き上がっており、
その上には、
端が欠けている銀の月。





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2012年11月1日木曜日

ジャカランタン



紺碧の空に大きな満月。
あれ程分かりやすく兎が餅をついているのに、
国によっては、全く違った柄を見るというから、
いつだって不思議に思ってしまう。

夜のパリは混雑しているようで、
時間帯が皆がレストランで楽しんでいるときだったからか、
思った以上にスムーズに進む。

途中から首に手を回される。
末娘バッタ。
運転中だからと、止めてもらう。

すぐに帰ってくるんだもの。

彼らに、というよりは、自分自身に言い聞かせていた。

その晩は、ちょっと早目の夕食にして、
前日から準備しておいたクネルをオーブンで焼く。
ピンク色のサーモンがふっくらと、ミルク色のベシャメルソースの中で大きくなる。
その秘密は練りこんだシュークリームの生地。
今回は、赤唐辛子をちょいとだけ入れて風味をつけていた。
コリアンダーと胡椒の香りに混ざって、
ピリリとした味わいが、ふっくらとしたクネルととろりとしたソースのコンビネーションに締まりをつけている。

もちろん、バッタ達からはブーイング。

でも、熱いから、辛く思うのよ、と誤魔化してしまう。

冷たくした白が欲しいところ。

二週間続けて毎日弾いているから、と、
末娘バッタはバイオリンを持って行くと言っていた。
が、車に積む段階で、
サロンに置きっ放しにしてあるケースが目に入る。

ちょっと考えて、
何も言わないでいることにする。

私と一緒なら、もちろん、どんなことをしても持たせてあげる。
でも、場所がないから、と、
あちらで置いてきぼりにさせられるかもしれない。
ちょっとだけ、胸に痛みが走る。

あっという間に、
といっても、小一時間はかかって目的のアパートの前の通りに着く。

荷物を降ろしたバッタ達と、
ビズをして、
さっと車に乗ってしまう。

ママ、お月様だよ!

バッタの、誰の声だったか。

帰りの方がスムーズで、
真っ暗闇の我が家に着く。

と、玄関にオレンジの灯り。
ジャカランタン。

先日、末娘バッタが、どうしても欲しいとスーパーで大きなカボチャを選んでいた。
息子バッタが、フランスのカルチャーではないから、と、非常に馬鹿にして、どうしても買わないと大騒ぎ。
そこを、まあまあ、と宥め、買っていた。

末娘バッタが長女バッタと早速取り掛かり、
息子バッタが外に遊びに行っている間に作ってしまった。
結構、なかなかの出来栄え。

カボチャのお化けに迎えられ、
オレンジ色に包まれて我が家の戸を開ける。

ふっと蝋燭を消し、
大きなお化けを腕に抱えて、一緒に家の中に入る。
重みが腕に心地よく、なんだか、にんまりしてしまう。



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